「それでは日本製デック、始動いたします」と僕は書きおえた。

この記事を書ける日を、
どれだけ待ち望んだことかとおもいます。

「この国はが本気をだせば、どれほどのトランプができるんだろう?」

何度も書いたことですが、
はじめは、ほんの思いつきでした。

冗談半分にも、伊藤大輔氏と、ほんの一歩足をだしてみると、
あれよあれよという間にこんなことになって——という印象です。

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「100年のこるトランプにいどめってことですか?」と、デザイナーはのけぞった。

時間軸は前にもどります。
日本製デックの製造と、同時に、デザイナーを探しました。

ハード(デックの性能)は、もちろん、
ソフト(印刷デザイン)も、あきらかに重要な要素だからです。

もちろん、グラフィックをいじって、
ちょこちょこ自分たちでデザインすることもできました。

しかし「プロにお願いしよう」と、
はじめから意見は一致していました。

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「これが、あの日本製デックですか」と男はカーディストリーをした。

カーディストリー。
耳なれない方も多いかもしれません。

僕自身、つい最近、聞くようになった単語です。
いわゆるカードを「曲芸的にあやつる技術」のことです。

トランプを使って、五つにも、六つにも、カットしてポーズをきめたり。
CGとしか思えないほどの手つきで幾何学的に混ぜたりします。

これをマジシャンは、
長らくフラリッシュ(フラリッシャー)と呼んでいました。

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「マジシャン用トランプって、ババ抜きできないの?」と、友人はたずねた。

今回、製作している日本製デックは、
もちろん「マジシャンが開発する、マジシャンの使用に耐えうるもの」がコンセプトです。

そして、だれも手にしたことのない日本製。
僕自身、ついあちこちで熱く語ったこともあるからでしょうか。

「日本製トランプだって? おもしろそうだね!」
「僕も欲しいと思ってるんだ」

マジック界と関係のない場所でも、
なにかと応援の声をいただくようになりました。

「私も欲しいんだけど、マジシャン用ってことは、
ババ抜きとか、七並べはできないの?」

意外なことに。
友人や、そうした方々から、ちょくちょくこんな質問もありました。

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「いや、日本もトランプをつくれるんじゃないですか?」と、伊藤大輔は即答した。

いわずもがなですが「日本製デック・プロジェクト」は、
僕(浅田)だけが行っているのでありません。

開発者として、もう一人、マジシャン伊藤大輔さんがいます。
彼なしに実現はありえませんでした。

あまり業界に顔をださないので、
今回は、ふわりと彼の紹介をしましょう。

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「トランプが大好きなだけだから。なんでも協力するよ」と、マジシャンたちは声をくれた。

日本製トランプの開発は手さぐりでした。
サンプルにふれて、改善して、またふれてのくりかえしでした。

しかし数十種類のサンプルを比べるのは、さほど苦でありませんでした。
いまでも試作品を手にするとどきどきします。

手前味噌ですけれど、
たとえノン・マジシャンの友人が「全部おなじだろ?」といったとしても。

たしかに自分にはわかる違いがあって、
そういえるものが自分の人生にもあるのだという事実が嬉しかったりもしました。

しかし、ある程度まで開発が進むと、
僕たちマジシャン二人では、どうにもならない領域がおとずれました。

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「壁は多い方が楽しいですから。簡単にできてもつまらないでしょう?」と、彼はにやりとした。

待ちにまった日本製デックのサンプルは、
想像していたより、ずっとすばらしいものでした。

まったく使いものにならない可能性すら考えていましたから。
少なくとも「勝負になるレベル」だと結論しました。

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「男の人って、トランプの厚さなんかで熱くなれるんだから」と彼女は息をついた。

喫茶店につくと、
女性の店員に珈琲をふたつ注文しました。

「なんでクイズ形式なんでしょう?」
「そういうところが職人のこだわりなんですよ」

むきあって笑いながら、
紙袋につまった80個ほどのサンプルをのぞきました。

夢にまでみた日本製デック。
その第一歩です。

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「この国に、これ以上のトランプ用紙はないでしょうね」と、紙の専門家は結論した。

こうして「ジャパンデック計画」はスタートすることになりました。
ようやく漕ぎつけたという想いでしたが——ここからが本番です。

この国に「マジシャンの使用に耐えうるカード」は存在しなかった。
いわば、まったくのゼロからの立ちあげですから。

マジシャンのカードは紙製です。
まず、なにはなくとも素材となる「紙の選定」からでした。

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